
はじめに
第1部 心を理解する
第2部 心を穏やかで楽な状態に回復する
第3部 私見
あとがき

心の働きと心の苦しさや悩みの本質を理解することが出来ます。
また、我々が当たり前のこととして受け入れてしまっている心に関する様々な思い込みに気付き、見つめ直すきっかけにして頂けます。

心の苦しさや悩みは必ず解決します。
心理カウンセリングや催眠療法より得た経験をもとに、心の苦しさの根本に対処するために日常生活の中で行なえる具体的な方法を説明しています。
また、カウンセリング活用のポイントもご理解頂けます。

成人の心の苦しさのほとんどは、その根本は幼少期にちょっとした経験が足りなかったことに起因 します。
子育てに関わるみなさんが、この『ちょっとした経験』について、具体的に理解することで、苦しみを抱え込まない大人に育てるための参考にして頂けると考えています。

現代の心に関わる事件や社会問題のほとんどが、出来事などによって生じた不快な感情を、感情以外を操作して解決しようとすることによって起こっています。
自分自身の感情に正しく対処できるようになることが、社会の流れを良い方向へと転換させることにつながると考えています。
なぜ、カウンセリングが、心の苦しさの解決に有効なのか?
その根本は、心理カウンセラーたちは、『日常生活でも生じる催眠効果』を妨げるやり取りを、その人の能力の中で、可能な限り排除したコミュニケーションを提供しようというしているという姿勢にあります。
そのような姿勢によって、『普通』と思われるやり取りの中で催眠効果を生じさせ、感情の排出(カタルシス)を得ることにつながるのです。
直接的には表現していませんが、来談者中心療法(クライエント中心療法)・催眠療法などの心理療法の意味、自律訓練法が効果をもたらす理由などもご理解頂けると思っています。
このポイントを抑え、効率的に活用すれば、短期解決も可能になると考えています。
心理カウンセラーや心の相談活動に関わっておられる相談員の方にも是非お読み頂きたいと思っています。
氏名 : 田中 順平 [タナカ ジュンペイ]
1965年 大阪府生まれ。
1989年 甲南大学理学部卒業。
1989年~2001年 (株)ダイエー、(株)ローソンのシステム部門に勤務。
1996年~2002年 カウンセリングを学び、「いのちの電話」相談員として活動。
2003年 日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラーの資格を取得、カウンセリングルーム「ピュアハート・カウンセリング」を開設、さまざまな心の悩み、苦しみを救うカウンセラーとして現在に至る。
【所属団体】
日本電話相談学会(正会員)
日本臨床心理カウンセリング協会(臨床会員)
ほか
【ホームページ】
ピュアハート・カウンセリング
URL : http://www.pureheart-counseling.com/
悩みとは何か? 心の苦しさの原因は何か? 本当の気持ちとは何か? ・・・ そして、心とは何か?
自分のことを、普通の言葉で考えることが、自分自身の正しい理解につながり、心の苦しさの解決をもたらしてくれます。
心の苦しさの原因は、心の問題ではなく、心に関する誤った思い込みが原因と言っても過言ではありません。
心の苦しさとは、そんな思い込みによって押さえつけられた心が、正しく働いてくれた結果、悲鳴をあげているだけなのです。
社会には、まだまだ、優しい人は沢山います。この本が、優しさとは何かを理解し、これまでそれを避けようとしていたということに気付き、そんな人たちの優しさの中に飛び込むきっかけになることを願っています。
そして、近い将来に、日本のみんなが「優しさに包まれている」と実感できる日が、きっと来ると信じています。
ピュアハート・カウンセリング
田中 順平
今思えば、その苦しさは、子供の頃からずっと感じていて、それと孤独に戦ってきたように思います。
そんな私でも、なんとか就職し、大阪の職場でしばらく働いたとき、東京に転勤することになりました。
そして、何ヶ月か経過した頃、頻脈や不整脈が身体症状として現れ始めました。
大学病院に行っても異常は見つからず、医師から「気のせい気のせい」と言われ、「これは気合と根性で治すしかないのだ」と決意したことを思い出します。
しかし、お酒を飲んでも、スキーに行っても、海に行っても、直ぐに症状が出てしまい、「死ぬって、こんな感じに急に訪れるんだなぁ……」なんて覚悟するような状態になったこともあり、おとなしく過ごす方向に切り替えたのですが、安静にしても、そのような状態にしばしば陥るようになってしまいました。
部屋の中を四つん這いになって移動したり、家の前に救急車が来るのは恥ずかしいと思い、深夜にいつでも救急車が呼べるようにと、公衆電話の前まで行ってその症状に耐えていたこともありました。
やがて、パニック障害の症状も現れ、電車に乗るのも必死、車に乗るのも必死、喫茶店や居酒屋などの店にも入れない状態にもなってしまいました。
そんなとき、当時働いていた会社のある事業所で『ミスター・スマイル・コンテスト』という明るく元気な社員を表彰する行事があり、なぜか、私は、ミスター・スマイルに選ばれたのでした。
『心と体』の状態と実際の行動が、そんなにちぐはぐになっていたのです。
私は、「もう生きていけない……」という気持ちになっていたのですが、死ぬ勇気もありませんでした。
そんなときに、いのちの電話という電話相談機関が、電話相談ボランティアを募集していることを知りました。
「自分のために生きられないのだったら、人のために生きてみよう」そう考えることで、かろうじて生きていく理由を見つけ出すことができました。
私が応募したところで相談員になるためには、1年間研修を受けた後、テストで相談員として選ばれる必要がありました。
当時、私は、コンピューターシステム関係の仕事をしていたのですが、丁度忙しい時期で、家に帰るのは連日深夜で、帰っても寝るだけで直ぐ朝になって仕事に行くという生活をしていました。
桜の花が咲いているなと思っていたら、気がついたら木枯らしが吹いていて、「夏ってあったっけ?」というような感覚しかなかったことを思い出します。
そんな状態だったのですが、相談員を目指す理由が理由だったので、絶対に実現する必要があり、何が何でも研修に参加し、最終のテストにはクリアしなければなりませんでした。
幸いなことに、職場の上司には、その研修だけは、忙しいときでしたが参加できるように協力してもらうことができました。
また、研修担当の方の中では、悩み込んでいた私はあまり評判が良くなかったらしく、もう少しのところでふるい落とされるところだったようなのですが、ある担当の方の力添えがあり、こぼれかけた私をすくい上げてもらい、何とか電話相談員になることができました。
話が長くなりましたが、これが、私のカウンセラーへ進む道の第一歩でした。
そして、相談員として活動する中で、多くのボランティア仲間との触れ合いを通して、ゆっくりでしたが「自分のために生きていてもいいのかな」と思えるようにもなりました。
しかし、私の場合は、自分の心が苦しいことに気づき、心の苦しみのどん底を這いずり回り、そこから抜け出すために20年余りの月日がかかってしまいました。
ボランティア相談員になりたての頃は、相談やカウンセリングといっても、気休めになるくらいのものだろうという認識だったのですが、今は違います。
カウンセリングや相談は、心の苦しさを解決することに大きな力を貸してくれると思っています。
誰かに気持ちをきちんと話すことを習慣にするだけで、心の苦しさは解消していくものだと確信しています。
それが、私自身の経験と、これまで行ってきた多くの方々とのカウンセリングや催眠療法を通して、私が至った結論です。
本書では、私がそう考える理由などを多くのページを用いて説明しています。
しかし、繰り返しますが、結論は至ってシンプルで
● 素直な気持ちを話さないから、心が苦しくなる
● 素直な気持ちをしっかりと話せば、心は楽になる
という短い文章に集約されます。
ですから、本書の途中でも、そのことを信じて頂けたら、本書の目的は達成できたということになります。
今、心の苦しさに向き合っている人が、その解決のために、私のように20年もの年月をかけなくても良いようにお手伝いしたいと思ったことが、本書を書こうとしたきっかけです。
心のことを正しく理解し、適切に対処すれば、もっともっと早い時期に、抜け出せないと思い込んでいた心の苦しみから抜け出せるようになります。
本書を読み終えた後に、そのための考え方と方法を理解して、「心の苦しさは必ず解決できる」と感じて頂けると信じています。
望みを間違うことにも臆病にならないで下さい。
たとえ、望みが間違っていても、それに気づいたとき、そのときに一番欲していると思うことを、再び望めば良いだけなのですから……。
一発勝負で自分の望みを言い当ててそれを叶えることなど、たとえ、それができたとしても、大して意味はないのです。
望み続けることこそが大切なことなのです。
心理用語に深層心理とか無意識というものがありますが、一般の人が使うこの言葉には、自分の意思ではコントロールできないことといったニュアンスが含まれてしまっているような気がします。
しかし、実際は、我々の心にはそのような正体の分からないようなものはなく、『トピックス:漠然とさせてしまった気持ち』(P87)でも説明しましたが、意識には、意識を向けられる部分と、自分の人生において当たり前すぎて意識が向かなくなっている部分の違いしかないような気がします。
そして、当たり前になってしまっていたということに気づきさえすれば、自分の意思で自分をきちんとコントロールしていけるのです。
もし、今の自分が心が満たされないとか、生きる意味が分からないとか、幸せになりたいといったことを考えているとしたら、そんな意識が向かなくなってしまった部分に意識を向ければ、そこに埋もれてしまっていた自分の本当の望みに気づくことができるのです。
本書では、悩みや心の苦しさを解決する目的で、心のことをいろいろと整理してみましたが、禅ではないのですが、結局のところ、自分自身や社会が言葉に含ませてしまった曖昧な意味に縛られて、心が自然な動きができなくなってしまったというのが、心の苦しみの正体なのかもしれないと、あとがきを書きながら思っています。
心の苦しさは、心の問題ではなく言葉の問題だということです。
ですから、せめて本書を読んで下さったみなさんだけでも、自分の心を見つめようとするときは、何気なく言葉を使うのではなく、大切に言葉を使うようにして下さい。
また、日々の生活の中でも様々な媒体を通して垂れ流される思慮のない言葉に振り回されず、自分の言葉でじっくりと考え理解しようとする姿勢が自分のためにも、今の社会のためにも、最も必要なことなのだろうと思います。
そのためには、子供の頃には、国語をしっかり勉強し、言葉を大切に扱う文学的な文章に多く触れることが大切だと思います。
そして、表面的なことだけではなく、言葉の持つ意味や、その言葉によって伝えようとしていることを、きちんと理解できるようになっておくことが必要だと感じています。
本書ではややこしいことをたくさん書いてきましたが、最後にもう一度、結論を書いておきます。
● 人とじっくりと話をする
● 話している事柄ではなく、その事柄を話したくなった気持ちに意識を向ける
● 話したいと思ったそのときに、話し相手を見つけて話をする
● 心の苦しさの解決を焦らずに、それらを継続する
たったこれだけのことで、心は苦しさから解放されていられるのです。