トピックス:反抗期
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『反抗期』は、一般的には、
- 子供が親に頻繁に逆らう時期
と認識されています。
そして、一部の親御さんは、この時期に子供の対処に困ってしまいます。
この『反抗期』という言葉は、反抗的だと感じる子供を「反抗期だから仕方ない・・・」と、ある意味肯定的に受け入れることを助けてくれます。
『反抗期』については、いろいろな解釈はあると思いますが、ここでは価値観や枠組みにポイントを置いて考えていきます。
今の日本には、第一次反抗期、第二次反抗期という解釈が広まっていますので、それぞれを順に考えていきます。
第一次反抗期とは
みなさんに共通することなのですが、私たちは、今まで生きてきた環境に根付いている枠組みに、自分をはめ込みながら生きてきたところがあります。
枠組みとは、
- 親からしつけられること
- 親がどのようなときに怒り出すか
- 親がどのようなときに喜ぶか
そういったことです。
なぜ、そのような枠組みに自分をはめ込んでしまうのでしょう?
それは、自分の安心・安全を保つためです。
もっと簡単に言うと、親に責められてつらくならないようにするためです。
枠組みに自分をはめ込むと、その部分の自由は奪われ、自分自身を不自由にしてしまいます。
しかし、安全・安心を保証してくれる枠組みなので、その不自由さとは裏腹に、私たちは、その枠組みをとても大切に扱いたいと感じるところがあります。
親もまた、自分の安全・安心を保証してくれた枠組みを持っています。
そんな状況の中に、子供たちは、新しい家族として生まれてきます。
親は、自分の分身ともいえる幼い子供たちにも、安心・安全に過ごして欲しいと願います。
そこで、自分がこれまで様々な経験を通して学んだ枠組みを子供に教えたいと思うのは自然な心理です。
幼い子供たちは、ただ自由です。
何の悪気もなく、ただ、自由なだけです。
しかし、親は、子供たちの自由な振る舞いに、これまで自分の安心・安全のために大切にしてきた枠組みを壊されそうな危機感を感じることがあります。
そんな危機を感じた親は、子供に、自分の枠組みに従うことを強要しようとしてしまいます。
ところが、小さな子供たちは、自分で考えて行動できるようになっていく喜びの真っ只中にいます。
親の枠組みなど理解できるはずもなく、その喜びを原動力として自由であり続けようとします。
また、親の言っていることを正しく理解する能力は、小さな子供には、まだ備わっていません。
親がたくさんのことを子供に指示したときには、その全て正しく理解することも出来ませんし、記憶しておくことも出来ません。
このようなことから、親の要求に沿わない行動を、何度も繰り返すことになります。
子供は、親に反抗している訳ではないのですが、子供の自由さに、自分の枠組みが壊されそうな危機を感じた親は、『子供が親に反抗している』と解釈してしまいます。
子供に何かを強要するとき、一般常識をしつけるという面もあります。
しかし、親が感情的になりがちなときは、・自分の枠組みを、子供にも押し付けているだけかもしれないと疑ってみる必要があります。
それは、子育てを修正するという意味だけではなく、その枠組みによって、自分自身の自由な気持ちが不自由にさせられていたと気づき、自由を取り戻すきっかけにもなります。
ここまでの説明から、第1次反抗期には、
親に焦点を当てると
- 第1次『親の枠組み』崩壊の危機
子供に焦点を当てると
- 第1次『親の枠組み』による洗脳期
という意味合いがあることを理解して頂けると思います。
- 親が、自分の枠組みを守ろうとする
- 子供が、親の洗脳から自分を守ろうとする
この戦いは、多くの場合、親の勝利で終わります。
小さな子供が大人に勝てる訳はありません。
親が、自分の枠組みを見つめ直すことに意識を向ければ少しは戦いも穏やかなものになるでしょう。
でも、全ての枠組みを取り払うことはできないので、その部分は、やはり親が勝利してしまいます。
この戦いは、親が譲れなかった家庭のルールを子供が受け入れることで沈静化していきます。
子供は、自分が洗脳されることと引き換えに、安心・安全を手に入れ、そして、家庭にも平穏が戻ります。
しかし、この親の勝利が、第二次反抗期の要因の一つになるのです。
第2次反抗期とは
子供たちは、親が提示した枠組みを『この世の中のルール』と思い込み暮らします。
しかし、家庭外では、そのルールが通用しない経験もします。
また、知能の発達や様々な情報を蓄積によって、
- 状況を客観的に把握する能力
- 把握したことをもとに論理的に考える能力
を身につけていきます。
そのように成長してそれら能力があるレベルに達した時、親が提示している枠組みや社会が提示している枠組みを検証して、自分の枠組みとして再構築する時期が訪れます。
親の枠組みに論理性がかけていることを、客観的に指摘されることもあるでしょう。
そんな状況に直面した一部の親は、第1次反抗期と同様に、「子供が自分に逆らっている」と錯覚してしまうのです。
これが、第2次反抗期と呼ばれている時期に起こることです。
この第2次反抗期と呼ばれるこの時期に、第1次反抗期のときと同じように名前をつけるとしたら、
- 第2次『親の枠組み』崩壊の危機
- 『社会の枠組み』崩壊の危機
- 親と社会による子供の第二次洗脳期
となります。
もしかしたら、第2次反抗期に親子の間で起こる戦いは親の問題ではなく、子供に巣立ちを起こさせるために、人類に備わっている本能的な仕組という面があるかもしれません。
昔は、14・5歳で元服を迎え大人として扱われていたようですが、そっちの方が理にかなっているのかもしれません。
動物なら、ここで無事巣立ちとなります。
しかし、現代の人間社会は複雑化しているため、この時期の巣立ちが基本的には許されません。
経済的な弱者である子供は親や大人に従うしかないのです。
ここでも子供が勝利することはまれで、親と社会が勝利してしまいがちなところがあります。
【補足】
再構築というと簡単そうですが、それまでの価値観が崩壊し、新たな枠組みを一から作っていくようなことをするので、精神的にはかなりの苦痛が伴うことがあることも想像されます。
その様子は、「思春期の悩み」といった言葉で説明されます。
第2次反抗期(思春期)以降で、劇的な心理的変化を起こす時期はありません。
ですから、あくまでも仮説ですが、思春期を巣立ちの時期だと仮定すると、それより後には、巣立ちを実現するための生物としてのプログラムは用意されていないと思えます。
社会的には「成人式」や「社会人になる」という時期は用意されていますが、それらは外部から与えられる概念で合って、人の内側から自然に起こる変化ではありません。
ですから、それまで子供扱いされていたのに、「君は、今日から社会人だ!」と突然言われても、急に巣立てるはずはないのです。
そんな不自然な巣立ち強いることのないように、せめて、心理的な巣立ちだけは、この思春期の時期に済ませてあげられるようにする必要があると考えています。
これは親だけでなく社会に対しても言えることです。
心理的な巣立ちは、
- 子供に思ったことは何でも言わせてあげる
- 子供の話を真面目に聞いてあげる
それだけで実現させてあげられると考えています。
多くの親御さんは、そのように対応し、心理的な自立を実現させてあげていることだと思います。
親が最も避けるべきことは、子供に対し、経済的弱者であることを理由に、親の言いなりにさせようとすることです。
現代社会は、20歳を超えるまでは、子供を経済的に自立させない仕組みになっています。
思春期の時期に巣立とうとする人を異端児的に扱うところがあり、容易に選択できる道ではありません。
ですから、お金の話を持ち出すと、子供は従わざるを得なくなり、自分の気持を引っ込めるしかなくなってしまうからです。
子供の考えを尊重しない環境に置かれた子供たちは、心理的な巣立ちも諦めてざるを得なくなります。
自分の目覚めを遅らせたり、親と社会(特に、学校社会)の枠組みによって自らを洗脳し、ようやく生きていけるようになります。
彼らが過ごすこれ以降の時期を、第2次潜伏期と呼ぶことにします。
第2次潜伏期は自分の内側から起こる気持ちを抑えて、社会や親の枠組みを受け入れようと努力しているので、心理的な苦痛を伴います。
子供の心は、次第に、衰弱し不満を蓄積させていくことになります。
第3次反抗期とは
第2次反抗期において、心理的な自立が許されないと、第2次潜伏期に入り、心理的な独立を諦めることに、気持ちを慣らしながら過ごすことになるのですが、ある時期が来ると、突然、社会の仕組みによって巣立ちが強要されることになります。
俗にいう『社会人になる』と呼ばれるタイミングです。
子供は何の心構えもないままに、親は「もう社会人なんだから」などと言って方針を180度転換させ、無責任に子供を親の枠組みや教育社会(学校社会)の枠組みから解放します。
そして、実社会の中で、「様々な枠組みを持つ様々な人との関わり」にさらされるようになります。
これは、子供の住む世界が、親の支配下・学校社会の支配下で身に付けた思考や条件反射が有効な世界から、それらが無効な世界へと大きく変わることを意味します。
子供に対する、親の支配・教育社会の支配・社会の支配が強ければ強いほど、そこからの変化に伴う衝撃は大きくなると予測されます。
子供が社会人になる時期に、子供の心にこのような世界の大転換を引き起こしてしまうことに気づいている人は少ないような気がします。
子供は、そんな親や社会の都合で、急に、自分の枠組みを変えられるはずがありません。
そんな戸惑いの様子が、第3次反抗期と呼ばれつつある時期の行動に現れているのだと思います。
第2次反抗期に、心の自立が許されずに、第2次潜伏期を経て自立しなければならなくさせられる人たちは、大体の場合、『心を回復する機能』を体得させてもらえていません。
ですから、苦しい時には、孤独に悩み込む傾向を持つことが多く、そんな傾向性を持った人が、苦しみを伴う自立への目覚めと向き合わなくてはならなくなるのです。
そんな彼らを一人きりにするのは、とても危険です。
誰かが手を差し伸べなければなりません。
しかし、そんな彼らは、困ったことに、手を差し伸べられてもそれを拒否し、子供の頃と同じように、一人きりで苦しみを抱えてしまう傾向性を身につけてしまっているのです。
そこが、一番、難しいところだと思います。
余談ですが・・・
歴史は、その時代の支配者にとって都合が良いように書き換えられると言います。
同じように、子供に対する解釈は、社会の支配者である大人にとって都合の良いように歪曲されているところがあります。
そして、子供の視点から見れば、反抗期などは存在せず、そこには、ただ、支配者からの押さえつけがあるだけだと理解することができます。