心を楽にするために振り返る子育て

トピックス:『あの頃の自分』に戻りたい

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※「あなたにもある心を回復する機能」に掲載しているトピックスをご紹介しています。

原因の分からない心の苦しみを感じていたり、心理的な要因から生じると思われる身体症状を抱えていたりするときに、「あの頃の自分に戻りたい」と願うことがあります。

このように『あの頃の自分』を振り返るとき、次のような表現が用いられることが多いです。

  • あの頃の自分は、嫌なことにも、立ち向かう事ができていた
  • あの頃の自分は、自分のやりたいことに前向きに取り組む事ができていた
  • あの頃の自分は、いろいろな事を楽しむことができていた

そして、それらの言葉の最後は、「でも、今の自分はそうではない・・・」といった言葉で締めくくられます。

しかし、そのように認識してしまうと、「何も原因はないのに、突然、今のような心の状態になってしまった」というような理解につながってしまいます。

そのように理解すると、心の苦しさの原因を自分の心に求めたり、それを病気と位置づけたりするしかなくなってしまいます。

しかし、あの頃のことを次のように理解することもできます。

  • あの頃のように過ごしていたら、今のような状態になってしまった。

これは、今まで目標としてきたことを、原因と理解し直すということですから、なかなか受け入れられないと思います。

これを理解して頂くために、更に、説明を続けます。

戻りたいと思っているあの頃を、嫌な気持ちに焦点を当て直して振り返ってみて下さい。

大体の場合、次のいずれかに当てはまることが多いと思います。


(1)自分にとって嫌なことが、長い間たまたま起こらなかった

(2)嫌な気持ちを感じていないことにすることができていた

(3)嫌な気持ちを我慢することができていた

(4)嫌な気持ちを、自分にとって良さそうなことに打ち込むことで、意識せずにすますことができていた


(1)の状態が、人生の初めから終わりまでずっと続けば問題ないのですが、そんなことはありえません。

人生の中では、嫌な気持ちになることに、必ず、何度も直面します。

また、ある1日をとってみても、小さな嫌な気持ちは何度も感じています。

そのような嫌な気持ちは、本人がいくら意識しないようにしてみても、心はそれを感じているので、確実に心に負荷を与え、その疲労が心に蓄積されていきます。

ですから、(2)~(4)のような対処をしていては、やがて、心や体が悲鳴をあげる状態になるのは、自然なことだと思います。

つまり、「今の自分を責め、あの頃の自分に戻りたい」と願っている場合のあの頃の自分は、『自分に生じた嫌な気持ちを無視していた』ということが共通していて、その蓄積が限界を超えて、今の自分の心や体が悲鳴をあげたと理解できるのです。

おそらく、「あの頃の自分に戻りたい」というのは、楽になりたいという意味で使っているのだと思います。

しかし、心が悲鳴をあげた理由を理解せずに、漠然と「あの頃の自分に戻りたい」と考えていると、嫌な気持ちになったときは、「あの頃と同じ対処をしよう」という決意が無意識に入り込んでしまいます。

つまり、自分に嫌な気持ちが生じたとき、再び、その気持ちを無視しようとしてしまうのです。

しかし、限界に達した心には、もう、それを許容する余地はありません。

「苦しみの解決を目指しているはずなのに、なぜか苦しい気持ちに陥ってしまう」ということを繰り返してしまうのは、今の苦しさに至る原因となった対処を、今も尚続けているからなのです。

つまり、「あの頃の自分に戻りたい」と望んでしまうから、逆に、苦しい気持ちに至った流れを続けてしまうことになり、あの頃を目指して頑張ろうとすると、確実に、苦しさに引き戻されてしまうことになるのです。

ですから、『あの頃の自分』は今の自分が目指すべきところではなく、大切な思い出の一つくらいの位置づけにして、それに囚われないようにすることが大切です。

あの頃の自分に戻らなくても、あの頃よりも、もっと楽な自分になれるのですから!!

そのために、心が悲鳴をあげないように、『嫌な気持ち』にきちんと回復することができる対処方法を身につけることが大切です。

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