モデルで説明する楽な心・苦しい心

03-02 感情の二次体験
「感情の二次体験」の種類
「感情の二次体験」には、次の2つがあります。
(1)予防を強化する二次体験(予防による守り)
(2)気持ちが回復する二次体験(回復による守り)
(1)予防を強化する二次体験(予防による守り)
一次体験によって精神的・身体的なダメージを受けたとき、今後、同様の体験を回避するように、他者から仕向けられる体験です。
【例】
反省させられる、説教される、指導される、怒られる・・・
この二次体験では、今後に向けて予防する力は強化されますが、一次体験によって生じているダメージ(特に、精神的なダメージ)は和らげられずに、逆に、強化されます。
(2)気持ちが回復する二次体験(回復による守り)
一次体験によって受けた精神的なダメージと身体的なダメージを、他者との関わりの中で安心で楽な状態を取り戻す体験です。
特に、精神的なダメージに対する手当は、「予防による守り」を弱めるようにも働きます。
【例】
気持ちを聴いてもらう、一緒に過ごしてもらう、抱きしめてもらう・・・
「感情の二次体験」の傾向
一般的に、身体的なダメージは適切に手当されますが、精神的なダメージはケアされずに放置され易いところがあります。
(例)怪我した子供への対応
子供が怪我をして血を流しているとき、「傷を消毒して絆創膏を貼る」といった身体的なダメージの手当に意識が向かない人はいないでしょう。
しかし、「痛くてつらい」という精神的なダメージへの手当は、対応する人によって、次のような傾向に分かれてしまいます。
■「痛いの痛いの飛んでいけーっ!」、「これは痛かったね・・・」とケアする人
■「これくらい我慢しなさい」、「これくらいのことで泣かないの!」と放置する人
前者は「『感覚・感情』を大切にする性質」を強化し、後者は「『感覚・感情』を隠す性質」を強化します。
(例)子供がものをなくして泣いているときの対応
子供が大切なものをなくして泣いているときに、たいていの人は「なくしたものを見つける」ということに意識が向きます。
このとき、「子供が悲しくて泣いている」ということには意識が向かない人がいます。
逆に、「そんなことくらいで、泣くんじゃない!」とか「泣かずに探しなさい!」と泣いていることを責めてしまうこともあります。
しかし、このような場合も、まず、「大切にしてたのになくなってしまって、悲しいね・・・」などと抱きしめてあげることが精神的なダメージのケアになるのです。
ところが、泣いている子供を放置して、親が子供の代わりになくしたものを探し出してしまうことがあります。
これは、怪我した子供に傷の手当てだけをすることに似ています。
なくしたものが見つかったとしても、子供の気持ちには、「大切なものをなくしたときの悲しさ」が残っているので、そんなに直ぐに泣き止むことはできません。
そんな子供に、「ほら、あったわよ!いったいどこを探してたの!」とか「あったんだから泣き止みなさい!」、「泣かずに探せば見つかるのよ!」などと、無自覚に子供を責めてしまう人もいます。
このようなことでは、精神的ダメージを緩和するどころか、傷口を広げてしまいます。
「怪我をして血が出ている」「大切なものがなくなった」ということよりも、「怪我が痛くてつらい」「大切なものがなくなって悲しい」ということの方が、気持ちが回復する二次体験をするためには重要なことなのです。